Wisdom.136

‟心の奥をゆさぶる建築” 

- 藤森照信 -

 

 

コロニア・グエルの中に入った時、誰もがそれまで味わったことのない印象に驚く。敏感な人ならおびえる。大きくくくれば胎内感覚といえるが、普通の胎内感覚とは深さが違って、野獣の胎内というか、胎内の底からふつふつ沸いてくるような感覚なのである。生命現象、その母体としての大地の感覚といえばいいか。

 

このガウディ建築以外ではありえない生命と大地の感覚を味わいながら、私はヘビとカメの謎が解けたと思った。

 

サグラダ・ファミリアの正面に立つ3本の柱は、ヘビとカメの上に立つ。ということは、自分の建物は大地と生命に由来する、とガウディは語っているのではあるまいか。21世紀に入って、ますますガウディ建築が私たちの心の奥をゆさぶるのは、その辺りに理由がある。

 

 

 

 

藤森照信(ふじもり てるのぶ、1946~)

建築史家、建築家。工学院大学教授、東京大学名誉教授。1980年学位論文「明治期における都市計画の歴史的研究」で日本都市計画学会賞論文奨励賞、86年『建築探偵の冒険・東京篇』でサントリー学芸賞、97年「ニラハウス」で日本芸術大賞、2001年「熊本県立農業大学校学生寮」で日本建築学会賞作品賞を受賞など。06年ヴェネツィア・ビエンナーレ第10回国際建築展で日本館コミッショナーを務める。主な建築作品に「高過庵」「養老昆虫館」「ラムネ温泉館」「焼杉ハウス」「ROOF HOUSE]など、主な著作に『明治の東京計画』『昭和住宅物語』『日本の近代建築(上・下)』など。