Wisdom.111

‟人間を包む空間” 

- 香山壽夫 -

 

(ルイス・)カーンの建築思想には、人間を包んで定着させる、落ち着かせる、心安らがせるような空間をつくるということが根本にあったと思います。これはまた建築の根本でもあるけれど、ときどき忘れられる。とりわけモダニズムの建築のなかでは忘れられてきた気がします。

そして、では実際に空間をどうつくるのかとなると、普通に考えれば壁や屋根を使えばいいということになりますが、カーンはそれでは不十分だと考えた。結局、壁や屋根で直接人間を包むとなると、押しつけがましいものになるわけです。では、どうするのかといったときに、まず建築とは人間を包む空間だと言う。では空間とは何なのか。光だ。だから光が人間を包むようにつくる。そういった光をつくるために壁を立てたり屋根を付けたりするんだと。

 

 

 

 

香山壽夫(こうやま ひさお、1937~)

建築家。東京大学名誉教授。ペンシルヴェニア大学大学院にてルイス・カーンに師事。1971年香山アトリエ環境造形研究所(現・香山壽夫建築研究所)を設立。「彩の国さいたま芸術劇場」で95年村野藤吾賞と96年日本建築学会賞作品賞、2000年「せきかわ歴史とみちの館」で公共建築賞、06年「聖学院大学礼拝堂・講堂」で日本芸術院賞を受賞など。主な建築作品に「彩の国さいたま芸術劇場」「東京大学弥生講堂一条ホール」「可児市文化創造センター」「函館トラピズチヌ旅人の聖堂」など、主な著書に『都市を造る住居』『ルイス・カーンとは誰か』『人はなぜ建てるのか』『建築を愛する人の十二章』など。