Wisdom.191

‟建築の実用的な起源” 

- 藤森照信 -

 

 

建築の精神的、文化的、宗教的な起源は別として、実用的な起源としては吉阪(隆正)の言うように雨風を避けるのが一番だったろう。しばしば建築とりわけ民家の形式は、土台から床から、壁から窓から柱から壁、天井、屋根などさまざまな部分からなり、一方、気候風土も雨、風、日照、温度、湿度などからなるが、気候風土の中で何の要素が一番影響力が強く、一方、影響を受ける建築の側ではどの部分が一番よく反応したのか。間違いなく、雨と屋根だった。雨が降り、屋根が凌(しの)ぐ。

気候風土を自然と言いかえるなら、自然は雨の一粒一粒に凝縮され、屋根は建築というものを一身に代表して一粒一粒を受けとめた。屋根は、自然との接点だった。屋根には自然が浸みていた。

 

 

 

 

藤森照信(ふじもり てるのぶ、1946~)

建築史家、建築家。工学院大学教授、東京大学名誉教授。1980年学位論文「明治期における都市計画の歴史的研究」で日本都市計画学会賞論文奨励賞、86年『建築探偵の冒険・東京篇』でサントリー学芸賞、97年「ニラハウス」で日本芸術大賞、2001年「熊本県立農業大学校学生寮」で日本建築学会賞作品賞を受賞など。06年ヴェネツィア・ビエンナーレ第10回国際建築展で日本館コミッショナーを務める。主な建築作品に「高過庵」「養老昆虫館」「ラムネ温泉館」「焼杉ハウス」「ROOF HOUSE]など、主な著作に『明治の東京計画』『昭和住宅物語』『日本の近代建築(上・下)』など。